「がんになって良かった」までは言わなかったのですが、「入院楽しみです。これでやっと解放されます」と嬉しそうにおっしゃるのは末期がん患者、NYさん、75歳女性、昨日岡山県から娘さんと妹さんと一緒に私のところに来られました。
今年6月から体の調子が思わしくなく、首のところにしこりがあることに気づく。とくに痛みはなかったので大丈夫だろうとそのまま過ごしたのですが、そのしこりがだんだんと大きくなり、気になって病院に。小さい病院から紹介状を書いてもらい、大きい病院で検査を繰り返し、やっと病名が分かりました。原発は胆のうがん、すでの肝臓、肺、膵臓、リンパ、甲状腺に転移があり、多発性転移のがんの末期、と宣告されました。手術はできなく、抗がん剤も効かないだろうとのこと。でもご本人の希望があれば1、2クール抗がん剤治療を試してもいい、とのこと。その結果を聞いて娘さん、妹さんはびっくり、ショックでしたが、本人は「ほっとした」そうです。
「がん治療のために入院するとお父さんの監視、干渉から解放されるからうれしかったです」と本人。おとうさんのことご主人、亭主関白の方で他人に厳しく、何につけて文句を言って奥さんを苦しめるそうです。特に7年前に軽い脳卒中を患い体が不自由になってからは一層「口が達者」で、お食事からお風呂のお湯の温度、お湯の量まで文句をいい、奥さんのNYさんはひたすら我慢の生活を強いられたそうです。それに加えて、長男、長女の離婚などもあり、強いストレスの中で生きて来られた。
「自分はいずれお父さんに殺されると思っていましたが、本当にその通りがんになったのです」とNYさん、悔しそうにいままでの我慢の人生を語り続けました。
「でも、ちょっと待ってください。生きる道はありますよ」と私。
「がんになった原因がご主人からのストレスということがはっきりわかっていますので、そのストレスから逃れれば、がんは治りますよ」と強く生きる道をお勧めしました。
「本当ですか。こんなひどい末期がんでも見込みありますか」
「もちろん、生きる道はあります。あなた次第です。あと娘さんらの家族の協力が必要です」。
娘さんも、一生懸命私の話を聞いておられ、ぜひお母さんを助けたいと必死でした。
「先生、私まだ75歳、あっちの世界に行くのはまだ早いですよね。子供たち、孫たちのためにもあと10年は生きたいです」とNYさん、生きる決意をされ、漢方養生を実行することになりました。
「抗がん剤治療は慎重に考えてくださいね。お父さんから逃れる方法はいろいろあるでしょう。温泉でゆっくりリラックスしたほうが入院よりよっぽどいいと思います」と、最後に付き加えておきました。
がんをきっかけに、NYさん自分を生きる幸せを手にするかもしれません。