私は10歳になるまで体が弱く、
それに三つ口でしたので、幼稚園と小学校では
いろんなあだ名で呼ばれながらよくいじめられました。
ちょっといじられたらすぐ泣きましたので、村では泣き虫で有名でした。
また、私は姉たちにも弟にも似てなかったので
「あんたは村はずれの橋の下で拾われてきた子だよ」と
よく村の人たちにからかわれました。
泣きながら「そんなはずがない」とむきになっていた自分を今もはっきり覚えています。
それが、物心が少しずつ付いてくるようになると、
自分より母の苦労が目に見えてきました。
他の家のお母さんたちより倍以上働きながら、
朝飯を抜きにしたり、あかぎれに味噌を塗ったりする母を見ると、
涙が出ました。「大きくなったら必ず母さんを楽にしてあげる」と心の中で誓いました。
これと同じくして、一番上の姉にきつく諭されました。
いつも泣きながら帰ってくる弟がみっともないと思ったか、気の毒に思ったか
「お前も男だろう。男はもっと強く生きなければならないんだ」と言いました。
そして私の出生の秘密を教えてくれました。
姉は私より16歳上でしたので、私が生まれたときのことを全部知っていました。
その時、死んだ姉の子供とKちゃんの顔が脳裏をかすめていきました。青天の霹靂でした。… …