2016年植村直己冒険大賞受賞者の平出和也さんは山岳カメラマンとして
エベレストをはじめ多くの危険な山の撮影登山に成功していますが、
ビデオカメラの重さを減らすために、ほとんどのねじをプラスチック製に
取り替えたと話しました。
「時には1gが命取りになります」の話にはさすがにショックを受けました。
私が8300mの最終キャンプから出発するとき、ガイドのペンパさんは
100gが命取りになるから、皆さんからの登頂祈願寄せ書きをキャンプに
残すように命令しました。
しかし私はこの寄せ書きの旗がお守りだと思い山頂まで持ちました。
私の場合には100g単位で要求されていましたが、平出さんの場合には
1g単位で計算されていました。ただの登頂だけでも大変なのに、
その大変さを記録に残そうとすれば、わらわれの100倍の体力と危険を
伴うということです。
そこで、平出さんはパワー節約のために、減量も心掛けました。
頭の髪の毛が7年前に会った時にはふさふさだったのに、今回お会いしたときには
かなり禿げていました。
本人も講演の冒頭に「私も何年か前までは髪の毛が多かったですが、
過酷な登山撮影を成功させるために、かなり減量に努め、結果今のように
髪の毛が薄くなりました」と冗談半分本気半分で言いました。
「命懸けて当たれば登れない山がない」から「命懸けで当たっても登れない
山がある」に至る平出さんの講演は、この1gが命取りになる一言葉で
もっと臨場感を帯びながら身に染みてきました。