明治時代の高僧暁烏敏は言いました。
「十億の人に十億の母あらむも わが母にまさる母ありなむや」
母は裕福な家のお嬢様として生まれました。
お父さんが働き者で昼ご飯のお弁当を持って行っては、
お弁当を食べるのを忘れてそのまま持って帰るほど
仕事に夢中だったそうです。
一代でたくさんの田んぼと畑を増やし、金鉱を持つようにまで大きくなりました。
母の上に兄さんが一人いて、下に妹が一人いました。
その兄さんは国費のアメリカ留学に選抜されるくらい勉強が良く出来たそうです。
今から100年も前のことですから、女の子は学校に通わせず、
早くから嫁入り修行をするのが習わしでした。
学校に行きたいといくら頼んでも聞いてもらえません。
母はしかたなく兄さんが砂箱で漢字の稽古をするのを傍で見ながら
たくさんの漢字を覚えたそうです。
結局爺さんが根負けして母を小学校4年生に編入してくれました。
あまりにも出来が良かったので、すぐ5年生を飛び級して6年生になったそうです。(つづく)
砂箱:漢字稽古のため箱に砂を入れたもの。漢字を書いた後、箱を揺すって砂を平にしてまた書く。