坂本龍馬は言いました。
「世の人は、われを何とも言わば言え。
わが成すことは、われのみぞ知る」。
弘基は小さい時から手が器用でした。
同じ親元で生まれたのになんでと負け惜しみの強い私でしたが、
認めざるを得ませんでした。
家に古いバリカンがあり、弘基が8歳の時にはお互いに散髪してもらうようになりました。
それが、弘基は段差が出ずにきれいに刈り上げてくれるのに、
私がしてあげた弘基の頭は凸凹だらけでした。
私たちが住む家は土壁でしたので、
毎年粘土に牛の糞と細かく切った稲わらをまじえて塗り替えます。
それが、弘基は鏡の面のようにきれいに塗りますが、
私のはどうしても鏝の痕が目立ちます。
弘基は小学生の時に、食棚を作ったり、
箪笥を作ったりしてみんなを驚かせました。
むかし家には大きな銅のたらいや、バケツがありましたが、
大躍進時代に政府に全部取り上げられました。
弘基はトタン板をもらってきては、木槌でその波をたたき直し、
たらいやバケツを作りました。
村の人たちが「この子将来どんな人になってくれるか楽しみだ」
と感心して言いました。
弟は小さい時からモノづくりの夢を育んでいきました。(つづく)