私が言う単語の力とは単語をどれくらい身に付けているかのことではなく、その単語が
持っている社会的力量のことであります。
言葉の力となれば「良言一句三冬暖,恶语伤人六月寒/良いことばは真冬でも人を暖め
悪いことばは真夏でも寒くて人を傷つける」に代表されるように、人を励ましたり、殺した
り、或いは国を興したり滅ぼしたりするほどの力がありますね。
今年の世相を表す漢字は、禍、密、肺などいろいろ予測はしていますが、札を開けて
みるまではわかりません。
私が今日ご紹介したいのは、「光棍」という中国のことばです。
昔は結婚適年齢を過ぎても結婚できない男性を指す、どちらかといえばマイナスなイ
メージの言葉でしたが、今は結婚しない単身の男、どちらかと言えばまだ一人でいる自
由自在の値打ちのある単身とプラスイメージの言葉にまで使われるようになりました。
「光棍」の「光」は、光るとか平とか栄耀とかの意味ではなく、少ないのただの意味で、
「棍」は丸い棒の意味。「光棍」は立っている体姿以外は家も貯金も嫁もなにも持って
いない男という意味になります。正に1という数字は「光棍」ただ1本の棒です。
11月11日は棒が4つだから「大光棍節」で、1月1日は「小光棍節」、1月11日と11月
1日は「中光棍節」、「光棍」今は縁起を担いで「双十一/二つの11」ともいわれるとか。
ところが、この「光棍」という言葉から、一日で7兆9千億円を売り上げる中国一大社会
現象を巻き起こした「光棍節」に変わるとはだれが予測したでしょうか。
新しい時代の誕生とと共に新語が生まれたり、また古い時代の終焉と共に死語が出て
きたりしますが、それにしても、「光棍」から、「光棍節」への変遷は、その社会的意義は
衝撃的ですね。