ユゴーは言いました。
「友よ、逆境にあるときはつねにこう叫びなさい。
(希望がある、希望がある、まだ希望がある)と」。
私が11歳の時、弟を連れて畑の草取りに行ったことがあります。
引き鍬で畑を鋤きながら、豆やトウモロコシの間に生えている雑草を取り除きますが、
真夏の炎天下での作業はなかなか大変です。
弟は最初のうちは私の前で草を抜いたりしてはしゃいでいましたが、
すぐ飽きてしまします。
「兄貴、おなかすいたよ」「わかった。弁当食べてこいよ」。
弟はすぐ泉のところにおいてある弁当を食べに行きます。
こんなことが何回か繰り返すうちに昼ごろになり、
休憩方々お弁当を食べようと泉のところに行きました。
弁当箱を開けた途端、私は泣きそうになりました。
なんと弟がお弁当をきれいに食べてしまったのです。
腹が立ちましたが、よくついてきた弟に怒ることが出来ませんでした。
とはいってもこのまま家に帰ることもできません。
今日一日で半分は終わらせて帰ると約束したからです。
私はやっきになって泉の水をたくさん飲み、休まずに仕事に取り掛かりました。
疲れて、おなかがすいてたまらなかったですが、
歯を食いしばって引き鍬を動かし続けました。
いつの間にか日が暮れました。
弟が怖いから帰ろうと泣き寝入りしていましたが、
仕事がはかどりあとわずかとなりました。
つい欲が出てしまい、二日分の仕事を一日で終わらせることにしました。
これが家では大変な騒ぎです。
8時になっても帰ってこない子供たちが虎にでもさらわれたのではと、
あまり歩けない父も母と姉たちと一緒に山の畑まで駆けつけました。
父の呼ぶ声が聞こえてきました。母は弟を抱きしめました。
姉が私の引き鍬を奪って残りの部分を終わらせました。
やっと事の大変さに気付いた私は父が怒るのが怖くて小さくなっていましたが、
父は詰まった声で「みんなが心配したんじゃないか」と
私の手についた土を優しく払ってくれました。(つづく)