尊敬する黒木正也さんが天国に召されました。
宮崎の同郷の木村庄之助に書いてもらった色紙を、私のエベレスト登頂を
記念して、この不撓不屈の書は正均さんにふさわしいとプレゼントしてくれました。
その後年に一回もう一組の夫婦と家族会を開き、互いの一年間の健闘を称えました。
去年は、自分は長時間の食事の付き合いができないからといって、魚町の老舗の店を
予約してくれました。
いつも酸素ボンベを引っ張っている見すぼらしい姿を人に見せたくないと言って外に
出たがりませんが、去年も今年も半分無理やりに車に乗せて静かなところを探して
お弁当を食べながら花見をさせてもらいました。
10年前から肺気腫に悩まされ、東京オリンピックまで生きれば悔いはないと口癖のように
言っていましたが、その望み通りとなりました。
中学校を出てすぐ宮崎の田舎から神戸に出てきて、荒れた世界で浮きつ溺れつでしたが、
奥さんが下の子をおんぶして上の子の手を引っ張って刑務所に面会に来てくれた時、
ぱっと目が覚めたそうです。
けんかに明け暮れた生活に終止符を打って、まともな人間になろうと誓いを立て、姫路の地で
成功するまで、幾度となく躓き、挫折し、地獄のどん底まで落ちましたが、不撓不屈の精神で
前へ前へと進みました。
ふとっぱらで、まっすぐで、面倒見のよい、人の痛みがわかる男らしい黒木さんの振る舞いは、
いつの間にか私のヒーローとなりました。
黒木さんの素晴らしい笑顔は黒木さんの波乱万丈の人生の賜物で、決してまねできるものでは
ありません。本当に悲しい寂しいかぎりです。
ただただ黒木さんのご冥福を祈念してやみません。
合掌。