芥川龍之介の作品には、夏目漱石の「草枕」の冒頭「智に働けば角が立つ。
情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかく人の世は住みにくい。」
とか、川端康成の「雪国」の冒頭「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」
のような派手さはありませんが、読む人が知らず知らず引き込まれていく魅力が
ありました。
芥田川龍之介といえば、「蜘蛛の糸」や「羅生門」などがよく紹介されますが、私の
印象に一番残っているのは「花」と「杜子春」です。
人間の心底に潜んでいるエコイムズをここまでリアリズムにわかりやすく表現している
のは、彼の天才的な観察力と筆運びのほかありません。
人が窮地に陥ったりみじめになったりするときは、同情したり哀れんだりしますが、
その人が良くなったり出世したりするときは、却って妬んだり悪口を言ったりする、
これが「鼻」の主題でしょう。
お金があって羽振りがいい時には、友よ兄弟よと言って寄ってたかりますが、
お金が無くなったとたん去ってゆく、これが芥川龍之介が「杜子春」を借りて
世間に言いたかったことだと思います。
夏目漱石が愛してやまなかった天才作家芥川龍之介ですが、35歳の若さで自分の命を
断ちました。夏目漱石、二葉亭四迷や尾崎紅葉は病にやられ早くこの世を去りましたが、
天才作家芥川龍之介、太宰治は自分の意志でこの世を去りました。
ノーベル文学賞受賞者の川端康成も。