天才作家太宰治が亡くなってから74年になりました。
一回書いた原稿は訂正や書き入れなど一切せずにそのまま上梓されたと
いうから本当にすごい作家なんだなと感心したものです。
新潮文庫のベストセラーランキングを見ても太宰治のすごさが分かります。
順位 | 書籍名 | 著者名 | 部数 |
1 | こころ | 夏目漱石 | 673万7500 |
2 | 人間失格 | 太宰治 | 657万4000 |
3 | 老人と海 | ヘミングウェイ | 482万3000 |
4 | 坊っちゃん | 夏目漱石 | 412万3000 |
5 | 友情 | 武者小路実篤 | 407万5000 |
5 | 異邦人 | カミュ | 407万5000 |
7 | 雪国 | 川端康成 | 379万3000 |
8 | 破戒 | 島崎藤村 | 374万7000 |
9 | 悲しみよこんにちは | サガン | 366万3000 |
10 | 斜陽 | 太宰治 | 365万6000 |
「人間失格」と「斜陽」を合わせれば1000万部以上になりますね。
大学では「人間失格」や「斜陽」を教えておもらうことなく、日本の中高生のように
「走れメロス」がもっぱらでした。
しかし、40年ほど前の中国では「走れメロス」と「人間失格」を同じ作家が書いたとは
到底信じがたく、葛藤に悩まされたものでした。
今のようにインターネットをたたけば何でも出てくる時代とは違い、著書の最後に簡単に
紹介された著者の経歴からは、天と地と申しましょうか、月と鼈と申しましょうか、
太宰治が描こうとする世界と心境がなかなか理解しにくいものでした。
それでも「人間失格」が私に与えた衝撃は大きく、何でそこまで自分を追い込まなければ
ならないかが少しずつ分かってきました。
日本の文豪たちには自殺者が多いですが、太宰治は自殺未遂を入れるとなんと6回になります。
私は夏目漱石のファンですと声高らかに言えますが、はばかりながら太宰治のファンには
なかなか慣れません。
太宰治が書いた世界と私が置かれた、或いは歩んできた世界の差を痛感しますが、太宰治の
文才と「走れメロス」の感動はいつまで経っても私の中に生きていることでしょう。
半人前の発酵職人・素人俳人・吟詠初心者 木元正均
https://www.eonet.ne.jp/~gin(私が所属している吟道清峰流猶興吟詠会HPです)