元NPO法人「利他の会」理事長岸本真知子さんが2018年9月書いた消費税に関するエッセイです。
岸本真知子さんは古稀を迎え、利他の会を解散するまでの三十数年間、毎年千人以上参加者の
音楽会を催し、姫路の文化を発信してきました。またそこから得た浄財を貧しい国の教育普及支援に
注ぎ、インドに新しい小学校4校を建ててあげました。ベトナム山岳地帯の少数民族学校へも学校設備や
図書館、校庭校門整備の支援をしてきました。
「レディ・ゴディバ」に想う 岸本真知子 2018年9月
消費税率が来年10%になるらしい。税率がどんどん上がり、その前には、いつも駆け込み需要が増え、
一見、景気が良くなったかに見える。大きな買い物は今のうちに済ませてと、多くの人が考えるが、
その後の反動も怖い。この年齢になると購買意欲も減り、高価なものは、「目の正月」だけど、楽しんで
いる。増税の一件で、以前読んだ記事を思い出す。
バレンタインデーにチョコレートを贈る習慣がある。この日に贈られる数あるチョコレートの中に、
「ゴディバ」という高価な銘柄がある。このチョコレートは世界的に知られているが、「レディ・
ゴディバ」の伝説は、あまり知られていない。
容器の箱には、裸の女性が白馬にまたがる姿がデザインされている。その裸の女性は「レディ・ゴディバ」
である。
11世紀のイギリス、コベントリーに住む人々は、領主レオフリック伯爵の課す重税に苦しんでいた。聖母
マリアを敬愛する「レディ・ゴディバ」は、コベントリーの住民を、重税の苦しみから解放したいと、夫に
度々減税を迫る。夫は不機嫌になり、度重なる嘆願に、とうとう妻に「お前が一糸まとわぬ姿で、馬にまたがり、
民衆の前で、街中を駆け回ることができるなら、願いを叶えてやろう」と難題をつきつける。美しく慎み深い
妻には、到底できないことだと、夫は高をくくっていたのである。しかし、「レディ・ゴディバ」は悩んだ末、
とうとう髪を解きほどき、神の房をヴェールのように全身に垂らし、白馬に乗って街中を回ったのである。
人々は「レディ・ゴディバ」の慈愛の心に打たれ、彼女の行為に応えるかのように、その日は窓を固く閉ざし、
彼女の姿を見るものはいなかった。「レディ・ゴディバ」のお陰で税制は改革され、住民の生活に幸せな日常が
戻ってきたという。この伝説が、ベルギーで生まれたチョコレート会社の命名と、ロゴの由来となっている。
このように、「身を投げ出して住民の生活を守る」そんな現代版「レディ・ゴディバ」はいないものかと探し
たくなる。そこまでいかなくても、せめて国民の身になり、政府高官の夫に、嘆願してくれる妻はいないものかと
今日の日本にお思いを馳せる。
「消費税率が上がるのも仕方がない」と思える国民の信頼と、納得のいく国政を願いたい。「8%の税率計算は
難しいが、10%は簡単である。手に取った品物も、すぐに棚に戻されるだろう」と、書かれた言葉を目にした。
品物の高騰感に繋がり、景気を回復するところか、景気が冷え込む税制改革のように感じる。実質的に物価が
上がると、買い控えするのは当たり前である。最初の3%に戻した方が、財布のひもが緩み、景気が回復する
のではなかろうか。
政治の場は、国民の心から離れることなく、国民の心を反映する場であってほしいと願う。
なかなか鋭く、且つ国民の心を代弁したエッセイに胸が熱くなりました。
次回は、岸本真知子さんのご主人様の消費税に関するエッセイを紹介したいと思います。
乞うご期待。