ジェームズ・アレンは書きました。
「夢は現実の苗木である」。
ブルース・スプリングスティーンは言いました。
「夢を語ろう。夢を現実にするのだ」。
世の中に親子兄弟の大学生は多いと思いますが、
兄弟が同じ大学の同じ教室で学ぶことはめったにないと思います。
もともと弘基が通っていた吉林農業大学と、
私が通っていた吉林大学は同じ長春市にありました。
同じ町で一緒に3年間勉強しましたが、一回も一緒に映画を見たことがありません。
すでに還暦を越えていた母を姉と義兄に任していたので、
一刻たりとも無駄に使うのは許せない罪という意識が強かったからです。
それが毎日同じ寮で寝泊まりして、同じ食堂で3食を食べて、同じ教室で学ぶようになるとは、
夢にも思っていませんでした。
弟は大学では英語を習っていましたから、
日本語は完全に独学によるものです。
それが日本語専門の3年生と一緒に勉強しても引けを取らないものですから、
先生もクラスメートもびっくりしました。
正直私も弘基の日本語の底力にはいささか驚きました。
毎日勉強が終わってからは、消灯時間まで兄弟で夢を語らいました。
子供の時のつらかったことも語らいました。姉たちと義兄たちのことも語らいました。
そして話の終わりはいつも母がテーマになっていました。
ある日弘基が言いました。
「兄貴、私たち将来東京でさかずきを交わしましょう。そして母を東京に呼びましょう」。(つづく)