健康情報『 動 脈 硬 化 』 突然死を招く不整脈
心室細動・心停止、AED使用、遺伝性、禁煙が重要
4月に突然死したお笑いタレントの前田健さん<44歳>には不整脈の持病があった。路上で倒れ、病院に搬送後に亡くなり、早すぎる死にショックを受けた人も多いだろう。直前まで仕事や家事をこなし、いつもと同じ生活を送っていた人が急に帰らぬ人となる突然死。年間7万5千人が心筋梗塞などの心臓病が原因で突然死している。その大半は不整脈で意識を失うとみられる。不整脈で最も怖いのは“心室細動”だ。心臓は左右の心室と心房の4つの部屋に分かれる。心室細動は、全身に血液を送るポンプの役割を果たす心室がけいれんを起こし、脈拍が不規則になり、数えられないほど早くなる病気だ。心室細動は心停止と同じような状態となる。脳に血液が行かないので10秒前後で意識が遠のき、10分間続くと脳死になってしまう。一刻も早くAED(自動体外式除細動器)を使って電気ショックを起こし心肺蘇生をする必要がある。心室細動は心筋梗塞の前後に発症することが多いが、心室細動からそのまま心停止になる場合がある。また、脈は規則的ではあるものの、1分間に200回前後と早くなる心室頻拍は、長く続くと血液が全身へ行かなくなり突然死に繋がりやすい。
一方で脈が非常に遅くなる徐脈も危険だ。脈が遅くなる不整脈には“洞不全症候群”と“房室ブロック”がある。心臓は右心房にある発電所“洞結節”から出る電気信号によって拍動している。洞不全症候群は洞結節がきちんと機能せずに脈が遅くなり、めまいやふらつき、意識消失を引き起こす。房室ブロックは心房から心室に突然電気が伝わらなくなり心停止を引き起こす病気だ。これらの危険な不整脈がなぜ起こるのか。心臓に病気を持っている人が起こす場合が多いのだが、動脈硬化が進んでいるのに気づかず、心筋梗塞を起こした直後に心室細動で突然死する人がいる。また、ブルガダ症候群は睡眠中や安静時に心室細動を起こす。QT延長症候群は心臓の細胞機能の異常によって心室細動を起こす。これらは遺伝性の病気が原因の事もある。失神した経験のある人や、親族に50歳未満で突然死した人がいる場合は循環器科で検査を受けることをすすめる。心室細動を起こしやすいと診断された場合は植え込み型除細動器(ICD)の挿入が有効だ。電気ショックで突然死を予防する。保険適用の完全皮下植え込み型除細動器(S-ICD)もある。心筋を焼き切るカテーテルアブレーションの手術もある。予防は肥満、高血圧、高血糖、脂質異常症、喫煙、ストレス、睡眠不足などを改善し、これからの季節は脱水症状に気をつけ、カリウムが豊富なレモン水や低カロリーのイオン飲料の補給を心掛けよう。 (毎日新聞記事より)